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仮発注で成約前に作業を開始するリスクは、いつも中小企業や下請け企業が負わなければならないんでしょうかね・・・

「仮発注白紙で損害」下請け会社、松下側に10億円請求
日本郵政公社発注の郵便局用防犯カメラの設備工事を巡り、落札した松下電工(大阪府門真市)から約11億円の「仮発注」を受けた下請け会社が、業務を一方的に取り消されたとして26日、松下電工と松下電器産業を相手取り、損害賠償を求める訴訟を横浜地裁に起こした。松下電工は発注先を親会社にあたる松下電器の社内分社に変更したという。下請け会社は違約金など約10億円の損害を被ったとしている。
訴えたのは横浜市の日本システム工学。同社は、電工側の対応は下請法違反(受領拒否など)にあたる可能性が強いとして公正取引委員会にも申告している。 (中略)
電工は入札前、工学に機器の見積もりを依頼。工学が作った積算資料で落札した。電工側から工学側には受注者だけに開示される約2400局の金庫や防犯カメラの見取り図と、機器の個数が書かれた「仮注文書」が示されたという。これを受け、工学はカメラなどの生産注文を海外メーカーなどに始めた。
しかし、「仮注文書」の提示から9日後、電工側は「松下電器側に注文することになった」「会社幹部がキャンセルしろと指示している」などと通告してきたという。工学側は取引再開を求めて交渉を続けたが、電工側は「そもそも発注はしていない」との姿勢となり、平行線をたどっていた。
asahi.com 2007年09月27日08時28分

要するに、松下電工から示された仮発注を受け、日本システム工学が契約書を取り交わす前に必要となるカメラなどをメーカーに発注してしまったけども、仮発注がキャンセルされてしまったために日本システム工学が大損害を受けたと。

こういったことは、大規模なシステム開発などの取引では比較的多く行われているようで、受託会社の法務部門の頭を悩ます問題のようです。設備工事などの受注取引でもやっぱりあるんですね。
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ご存じの方も多いと思われますが、法律上、契約というのは契約書などの書面がなくても、口頭の約束のみで有効に成立します。
「〜契約書」という標題の文書を作成しなくても、法律的には問題ないのです。

ところが、このケースのような場合には、お互いの主張が真っ向から対立しています。こういう場合、当事者間に契約内容について合意があったことを主張・立証しなければなりません。この主張・立証において契約書は決定的な意味を持ちます。

契約書がない場合には、その他の「物証」によって合意の存在を立証しなければならないわけです。
この点、詳細な事情が不明ですが、上記の記事によれば、「電工は入札前、工学に機器の見積もりを依頼。工学が作った積算資料で落札した。電工側から工学側には受注者だけに開示される約2400局の金庫や防犯カメラの見取り図と、機器の個数が書かれた「仮注文書」が示された」とのことで、これらの証拠によって、果たして合意の存在を立証しきれるかは不明です。

損害の大きさや、被害会社が下請け会社であるということから、ちょっとかわいそうな感じもしますが、やはり「仮発注」の段階で部材の調達や作業の開始をすることは、リスクが高いといわざるを得ません。

契約が成立していない以上、損害が発生していたとしても、損害賠償請求をすることは、一般に困難なんですね。

ただ、契約成立前であっても、一定の範囲で損害賠償を認める考え方もあり、裁判所も認めています。「契約締結上の過失」といわれるものです。最高裁において昭和59年9月18日に出された判決で認められています。
契約が成立するに至らなかった場合でも、契約交渉の段階で相手方に契約の成立に対する強い信頼を与え、その結果相手方が費用の支出や資金手当をして損害を受けた場合には、契約準備段階における信義則上の注意義務違反により相手方の損害を賠償する義務を負う
ビジネス実務法務検定試験3級公式テキスト 2007年度版96ページ

ただ、この考え方は例外中の例外を認めたものだと思っておいた方がよいと思います。現に、これを認めた裁判例は極めて少ないのです。

見切り発車のリスクを十二分に意識することが大切だと思います。

このエントリに関連する他のブログ記事はコチラ↓
下請け会社、松下側に10億円請求 byブログ、依然継続中(ヤクト氏)


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Author:瀧本 宏隆
30代 東京某所に勤務(研究職)
小さなシンクタンク(独立系)にてコンサルティング、社内教育プラン策定・実施、各種コンテンツの企画立案・執筆・編集など、様々な業務を行っています。
著作権、機密情報管理などを主な専門領域としています(が、駆け出しのため勉強中)。

最近は、IT系業務のプロセス管理手法に興味あり。

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